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旭川家庭裁判所 昭和40年(少)1609号 決定 1965年9月30日

少年 Y・T子(昭二六・一二・二五生)

主文

少年を教護院に送致する

理由

(非行事実)

少年は、知能指数七二の限界知にあつて意志薄弱、情緒不安定な性格を有し、家庭もまた保護者である両親の間が必しも円満でなく、ことに実父は、飲酒をすると酒乱の傾向があつて少年の監護について適切でない環境にあつたのであるが、昭和三九年九月頃から少年に学校生活不適応の行動がみられるようになつて学校への納入金を納めないまま費消したり、交友関係が急激に悪化して旭川市内の中学、高校生からなる非行グループと交遊しては保護者に無断で、四、五日または一週間位を単位として外泊することが多くなり、ことに中学二年に進級してからは、登校日数は半数に満たず、日中あるいは夜間に不良交友とともに旭川市内の盛り場を徘徊し、あるいはその間に知り合つた者の家に男女が集つて長期間寝泊りして徒食交遊し、その間同行する不良交友とともに他の中学生らから金品を喝取し、または通学先あるいは他の中学校の教室に侵入して生徒の机内から金品を窃取する等の犯罪行為を犯し、さらに暴力団員を含む数人の不特定の男性と性関係を結ぶ等の環境の中で日を送つていたものであつて、保護者の正当な監督に服さず、かつ自己の徳性を害する行為をする性癖を有するもので、上記環境および少年の性格に照らし将来売春または窃盗、恐喝等の財産犯罪を犯すおそれがある。

(処遇)

本件は、少年に対し、別紙審判に付すべき理由記載のとおりの事由により、旭川児童相談所長から児童福祉法第二七条の二の規定により、その行動の自由を制限しまたはこれを奪うような強制的措置をとる必要があるものとして送致されたものである。そこでまず少年に対し教護院入所後強制的措置をとることの要否について考えるのに、調査および審理の結果によれば、少年は、上記認定のような非行事実があつて二回に亘り旭川児童相談所に通告され、児童福祉法による一時保護を加えられた際、同相談所から逃走したり、またしばしば保護者に無断で外泊を繰り返しては上記非行事実欄に認定したような非行をなして来た事実が認められるけれども、現在の環境の下で一時保護施設から逃走したりまた適切な監督下にない保護者の下で無断外泊を繰り返したような事情が存在するからといつて直ちに教護院入所後強制措置をとる必要があるものと認定することはできないのみならず、少年に逃走以外に行動の自由を奪う等の強制措置を必要とするような事情はこれを認め難い。そして、本件送致に当り、児童相談所長としてはすでに国立きぬ川学院に入所の諒解を得ていることがうかがわれるが、少年の非行期間がさほど長期でない点から現地の環境をはなれ、設備の整つた同学院に収容されて適切な教育、監護を受けるならば(この措置は後記のように当裁判所も適切であると考える)。環境の変化、改善と相まつて逃走事故はあえて強制措置をとるまでもなく、防止することが期待できるものと思料される。以上の点を勘案すると、現段階においては、少年の行動について強制措置をとることの必要を認めるに足る十分な事情は未だ存在しないものといわざるを得ない。

もつとも、少年については、すでに非行の程度も相当深化の傾向を示しており、冒頭掲記のような保護環境、少年の資質、性格に照らすと、少年を在宅のまま児童福祉法上の措置に委ねることはもはやその域を越えており、早急に教護院に入所せしめたうえ、その健全な育成を図る必要が認められるのであるが、本件審判期日に保護者として出頭した実父母は、少年の保護の方法について理解が十分でなく、かつては児童相談所長に対しても少年の教護施設入所について同意ないし希望意見を述べていたのに現在では入所に反対し引取り方を希望している実情にある。

そこで、少年の処遇については、本件をさらに児童相談所に送致し、その処置に委ねるよりも、少年に対する保護の目的を達成するため保護処分として少年を教護院に送致するのがより適切な措置であると思料される。なお、上記のような本件についての事情と少年が婦人病に罹患している事実を考慮し、国立きぬ川学院等設備のととのつた教護院に入所せしめるのが適当であると考える。

よつて少年法第二四条第一項第二号を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 吉井直昭)

別紙

審判に付すべき理由

児童は保護者の正当なる監護に服さず家出、外泊を頻繁に行いその間に窃盗、不純異性交遊をなし、喫煙も常習で暴力団との結びつきもある。又、学校をずる休みすることも多く学校並びに家庭への不適応行動は顕著である。

過去二回に亘り当所へ一時保護を加へるも無断外出を繰り返しており、開放処遇は困難である。従つて行動の自由を制限又は奪うような強制的措置が必要である。

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